国の官寺として威容を誇った大安寺には、東西両塔が高くそびえていた。
その塔は黄金造りであったため、闇の夜でも眩しく輝き、その光は山を越えて、はるか彼方の大阪や堺の海まで照らしていた。
塔が放つ光があまりに明るいので、大阪や堺の海では魚が取れなくなり、困った漁民たちはついに大安寺に押し寄せ、火を放って塔を焼き払ってしまった。
以来、魚も取れるようになったという。
また、その大安寺の塔の礎石(そせき)を盗もうと、ある夜、ひとりの石工が西塔の礎石に近づき割りかけると、突然、石の中からまっ赤な血が噴き出した。
驚いた石工は急いで逃げ帰ったが、その石工は病にかかってしまったという。
今も国の史蹟として大安寺周辺は保存され、塔跡には史話を物語る大きな礎石が残っている。
大安寺地図
アクセス
JR桜井線(万葉まほろば線)「京終駅」より徒歩約19分