弱肉強食の戦国時代、大和国筒井城主・筒井順昭は、28歳の若さで不治の病にかかってしまった。
嫡子(ちゃくし)の藤勝はまだ3歳の幼児。
順昭は思案の末、しばしば看病や琴をひいて慰めるために、城に出入りしている盲目の法師を思い出した。
『あの黙阿弥と申す法師は、確かに自分とうり二つ。
黙阿弥を影武者に仕立てあげ、死後3年間は自分の死を隠し通し、外敵の侵略を防ぐのだ。』と。
この計画は功を奏し、藤勝6歳の折に城主と定め、お家安泰を死守したという。
この藤勝が有名な筒井順慶である。
こうして、大役を果たした黙阿弥は、多くの金銀を手に、古巣の奈良・角振(つのふり)町へ戻っていった。
帰って来れば、元の黙阿弥、名もない一介の盲目の法師にすぎなかった。
この語源にもなる妙案を成功させた希代の智者・筒井順昭の肖像は、身代わり劇の立て役者・黙阿弥の住まいがあった角振町に程近い伝香寺に残されている。
伝香寺地図
アクセス
近鉄奈良線「近鉄奈良駅」より徒歩約5分