一人の男の子が生まれ、吉祥丸と名づけられた。
吉祥丸は、2歳の時、桑摘みにゆく母に連れられ、小乃保谷の山中に行った。
すると、突然、一羽の大鷲が舞い降り、吉祥丸を爪でつかみ、飛び去った。
当時、義淵(ぎえん)という名僧が奈良にいた。
彼が二月堂に参詣すると、杉の大木に、幼児を捕えた大鷲がとまっている。
義淵は驚き、幼児を助け降ろし、寺へ連れ帰り養育した。
これが吉祥丸で、やがて義淵の弟子となり、修業に励み、一代の名僧、良弁僧正となったのである。
良弁僧正は、自分の不思議な運命をすべて仏縁と深く感謝し、大杉を父母と思い、毎日礼拝していた。
そして、大杉の下で、数十年間わが子の行方を尋ね歩いていた母親と巡り会い、再会の念願を果した、という。
良弁僧正は、大仏殿の建立に力を尽し、東大寺別当職をつとめ、わが国華厳宗の開祖としてあおがれている。
東大寺地図
アクセス
近鉄奈良線「近鉄奈良駅」より徒歩約13分