永正年間のこと、大野の郷士、杉山平左衛門(すぎやまへいざえもん)の家に、小浪(こなみ)という侍女が仕えていた。
小浪は気だてがやさしく、いつも、大野のお地蔵さんにお参りしていた。
ところが、ある時、杉山平左衛門の家が火事で丸焼けとなり、小浪に嫌疑(けんぎ)がかかり、遂に火あぶりの刑に処せられることに決った。
刑場にのぞんだ小浪は、一心にお地蔵さんに祈りをささげ、手をあわせていた。
火はたちまち赤々と燃えあがったが、突然、小浪のからだがピカリと光り、お地蔵さんの姿に一変した。
それと同時に、はるかむこうの石の上に、手を合わせた小浪の姿が現われた。
人々はこの出来事に驚き、小浪の無実を認めた。
小浪は妙悦(みょうえつ)という尼僧になり悦庵で一生を送ったが、今も大野寺(宇陀郡室生村大野)には、この焼地蔵(国の重要文化財)が、現存している。
大野寺地図
アクセス
近鉄大阪線「室生口大野駅」より徒歩約5分