和尚には三人の姉妹があり、それぞれ子宝に恵まれなかったり、恵まれても難産で苦しんだ。 心を痛められた和尚は、ついに女人泰産の願をかけ、笈(きゅう)(本を入れる箱)を背に負うて東は関東から西は山陰までの旅に出て、四年七ヵ月を経て帰山した。 長い旅で浄財を集めた和尚は、念願のお地蔵さんを作ろう…
その昔、大和の国がまだ湖であったころ、湖をはさんで対岸の当麻(たいま)の主(ぬし)である蛇と、川原の主の鯰がけんかをした。 長い争いの後、ついに川原の方が負けて湖の水を当麻に取られてしまった。 そのため湖は干上(ひあ)がって、湖に住んでいたたくさんの亀は全滅した。 この出来事があって何年か…
天正(380年ほど昔)のころ、郡山城内の大書院の西庭に、ひとつのくつぬぎ石(戸口や縁側の上り口などに置いた石)があった。 ある夜、郡山城主・豊臣秀長と洞泉寺の開祖・宝誉上人(ほうよしょうにん)は、このくつぬぎ石を洞泉寺へ移すよう命じる同じ夢をみた。 二人はさっそくその庭へ行き、石をひっくり…
今から約千年ほど昔のこと、信貴山のお寺に、祈りで鉄鉢を空中に飛ばすことのできる命蓮(みょうれん)という偉いお坊さんがいた。 命蓮は、厳しい修業で手中にした秘術で 托鉢(たくはつ)もしていた。 ある日、この鉢が、昔、信貴山の毘沙門様のご利益を得て大金持になった山城の国(現在の京都府)の山崎に住…